年の若い仲間が―山では年の若い者程先きに立って働くと云う規律が在るのであるが、朝の二時半頃には跳ね起きて先ず靴を穿(は)き丹念にゲートルを巻きつけた。身拵(みごしら)えを済まして焚火を盛んに燃やしているその音に、一人二人と眼が醒(さ)めて天気は何(ど)うだと聞く。四時半石室の外へ小さな口から這(は)い出る、外は沈痛な程静かに空も山も凍りついている。昨夕吹き荒(すさ)んだ吹雪が何もかも敲(たた)き固めて終って、空気までも水晶のように硬く冷たい。見上げると長大な斜面が星の世界にまで突き込んでいる。頂から一走りに下るその蒼白な斜面が下に行って幾条かに岐(わか)れている。その端の雪の消えた辺りから暗褐色の緩いうねりが拡がり出して、広大な裾野(すその)を形作っている。裾野の闇(やみ)の中には彼方此方に掃き集められたような電灯の光が群っている。かじかんで蹲(うずく)まっている村や町なのであろう。
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